一般的な利用者が日々アクセスするウェブサイトは Google・Yahoo・Bing 等の検索エンジン、楽天・アマゾンや各種 e-コマースサイト、そしてその先にリンクされている検索対象、金融機関、そして物品販売会社の各種オンラインサービスサイト等、合計しても10〜50種類のサイトかもしれない。
しかし、実際にはインターネット網に広がるワールド・ワイド・ウェブ 1)インターネット上で一般利用者が各種情報を閲覧・やり取りできるようにしているシステム(以下:ウェブ)は止め処なく広く、検索エンジンからアクセスできるウェブサイト(通称サーフェスウェブ)に限っても、世界中のサーバーを介して17億超ものサイトが存在している。
この17億超ものウェブサイトも、インターネット全貌の氷山の一角でしかなく、情報量は全体の10%に満たない。90%以上とも云われる水面下の巨大なネットワークがディープウェブやダークネットだ。
ディープウェブとは?
ディープ(=深層)ウェブというその名前がかなりミステリアスな雰囲気を醸し出しているが、このネットワークにおける活動全てが “怪しい” 訳ではない。
検索エンジンは通常、クローラー(Crawler)と呼ばれるプログラムを用いてウェブを巡回し、情報を収集している。このような行為ができず、検索エンジンに引っかからないウェブページがディープウェブだ。
ログインIDやパスワードで対象を限定しているウェブページや、その中身がそれで、政府・企業・学校等の組織や団体、又は個人用、それぞれ様々な理由で情報を一般アクセスから隔離している。これらも全てディープウェブにおける情報で、何ら怪しい行いがある訳ではない。

インターネットの闇、ダークネットとダークウェブ
eメールやファイル(文章やデータ)のやり取り、IP電話、TV、ウェブサイトの閲覧等、インターネットやウェブが日常生活に必要不可欠な情報インフラとなって20年以上になる。
しかし、原子力・放射性物質の研究開発が(エネルギーや医療の進展だけでなく)マンハッタン計画へも繋がったように、インターネット革命にも負の側面が存在する。このインターネットの闇が存在するのは、ダークネットや(ディープウェブの一部分である)ダークウェブだ。
インターネット上で特定のソフトウェアを活用する事により匿名性・暗号化を確保したネットワークがダークネットであり、その(ダークネット)上に存在するウェブコンテンツがダークウェブだ。
Tor(トーア、The Onion Router)、I2P(The Invisible Internet Project、日本語:不可視インターネットプロジェクト)、そして Freenet 等の各種プロトコルを提供するソフトウェアが利用者の匿名化や通信内容の暗号化を担っており、過激派やテロ組織の連絡手段、薬物・偽造品・児童ポルノ・武器・盗品(ハッキングされた仮想通貨等も)の密売等、ありとあらゆる犯罪に利用されている。
最も多くのユーザーに幅広く利用されているダークネットソフトウェアであるTorは、20年ほど前、米国海軍調査研究所で開発された。当初は彼らが匿名でインターネットを利用する事が当初の目的だった。これを経由してウェブサイトを閲覧した場合、閲覧者のIP(インターネット上の識別)情報は暗号化され、世界中の複数のサーバーを複雑に経由してから当該サイトへ届くことになり、誰がどこからこの情報へアクセスしたのかは匿名となる。
闇サイトは犯罪のデパート
匿名性を確保する事で、シルクロード(Silk Road)等、悪名高き闇サイトでのやり取りが可能になる。闇サイトは前述の各種犯罪に関わるオンライン・デパートで、こういった闇社会にもインターネットの利便性が(不本意ながら)貢献してしまっている。
2011年に開設されたシルクロードは、運営者ロス・ウルブリヒトが2013年に終身刑になって閉じられたが、その後、シルクロード2.0(Silk Road 2.0)、プロジェクト・ブラックフラッグ(Project Black Flag)、そしてブラックマーケット・リローデッド(Black Market Reloaded)と、相次ぎ類似闇サイトが立ち上げられては閉鎖へと、司法当局とイタチごっこを続けている。
有名な闇サイトとしては、アゴラ(Agora)が2015年8月に閉鎖、アルファベイ(AlphaBay Market)が2017年に米国・カナダ・タイの連携捜査で閉鎖(逮捕数日後、カナダ人運営者はタイの刑務所で死亡)、そしてドリームマーケット(Dream Market、2019年4月に閉鎖)等の記憶が新しい。
近年は司法当局が国境を超えた連携をしており、こういった闇サイトを閉鎖へ追い込むだけでなく、逆にサイトを利用した捜査等も進んでいるようである。
脚注:
↑1 | インターネット上で一般利用者が各種情報を閲覧・やり取りできるようにしているシステム |
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