7月21日(日)夜、犯罪組織「三合会」とみられる集団が香港の(中心部から30km程離れたベッドタウンにある)元郎駅を襲撃し、今後の展開に関して様々な憶測を呼んでいる。白いTシャツ姿の集団が、棒状の武器や素手で駅利用者へ暴行(45人負傷、1人重体)を続ける生々しい一部始終が、SNS経由で直ちに世界へ拡散された。逃げ惑う者、妊婦、駆けつけた民主派議員、記者等が無抵抗の中、一方的に襲われる様は大変恐ろしいものである。
当日香港中心部で行われた大規模デモの参加者(通称:黒シャツ)への攻撃が執拗で、また、香港警察の対応が大変遅く(通報から一時間以上かかり、襲撃がほぼ終了してからの到着)、多くのメディアが中国政府の指示(香港警察容認)の疑いを報道している。
三合会と香港政府・香港警察・中国政府の関係
三合会は組織犯罪ネットワーク(結社)であり、現在、香港に構成員数十~数万人ものグループが50以上存在するとされる。1960~70年代初めには香港警察との深く広い癒着の闇が存在したが、70年代中盤からは警察の浄化が進んだ。ところが、1993年に中華人民共和国公安部部長は「黒社会にも愛国者はいる」という三合会を容認、鄧小平(当時の中華人民共和国 最高指導者)は「黒社会も真っ黒ではない、愛国者も多い」と発言し、1997年の香港返還前後から三合会は香港政府・香港警察・中国政府と結びつきを強めている。
勿論、香港当局は三合会そのものを正式には違法とし、規制している。つまり、上記の三合会容認のつながりはあくまでも通説だが、仮説でもある。ただ、2014年の香港反政府デモ(通称:雨傘運動)でも、新中派に雇われた三合会構成員(19人が逮捕)がデモ参加者に暴力を振るったと民主派からは批判されている。
汚職状況の酷い中国、煽りをうける香港
国際NGO組織であるトランスペアレンシー・インターナショナルでは政府(政治家)・行政(公務員全般)の腐敗による汚職状況を世界約200カ国弱、国別に調査しており、腐敗認識ランキングを毎年公開している。2018年版ランキングによると香港は世界で14番目にクリーンとされており、18番目の日本より良い。しかし問題は87番目である中国だ。香港は、圧倒的に汚職状況が酷い中国に返還された訳であり、その影響が今回の事件にも繋がっていると考えられる。

三合会の襲撃は徹底的な武力行使前の警告か?
大きな懸念がある。21日以前の一連「逃亡犯条例」改正案デモでは不満や抗議活動は全て香港議会や自治機関に向けられていた。ところが、当日夜、初めてその矛先が中国政府に向けられたのだ。
中国政府の出先機関である「中央駐香港連絡弁公室」を取り囲み、建物に卵を投げつけ、中国の国章に黒い液体をかけた。国章を汚すのは最大級の侮辱行為であり、「一国二制度の原則の限界ラインに触れるもので絶対に認めない」(中国政府の香港マカオ事務弁公室)、そして「中央政府への権威への公然とした挑戦だ」(中国共産党機関紙、人民日報)と、中国政府の強い憤りが分かる。
中国では歴史的に中央政府・共産党への挑戦(批判)はご法度であり、武力による弾圧、厳罰、そして厳格な報道統制に遠慮は一切無い。天安門事件(中国共産党発表では死者319人、伝聞では千人規模とも云われいる)での無差別発砲や戦車の投入は僅か30年前の出来事であり、今もその国家統制への姿勢に変化は見られない。
白Tシャツを着た三合会構成員による暴行は、香港で日々広まるデモ活動に対する中国中央政府からの強い警告なのか?何にしても、香港行政府が事態を解決(デモを鎮圧)できなければ、次は中国本土の人民武装警察部隊(中央軍事委員会直轄の暴動鎮圧専門部隊)を派遣する可能性があり、事態の悪化が危惧される。
香港デモ、背後に米国当局者?
中国外務省の報道官が23日の会見で、今回のデモ(黒シャツデモ)の背後に米国当局者がいると主張し、関与を止めるように要求した。米中関係が同盟関係になる事は考えにくいが、現在、特に険悪な敵対関係にある訳でもない。深刻な告発であり、証拠無く中国がこのような主張をするのは考えにくい。かつて米国CIAのお家芸だった国家転覆やクーデターの扇動(イラン、グアテマラ、チリ、等々)がまだ行われているというか?