IPO松屋R&D [7317] が4月6日に公募価格割れ(初値が7.9%の損失)で東証マザーズ上場して以来、約80日の沈黙を経て、6月24日の上場再開から約1ヶ月程になる。ここ1ヶ月のIPO(11件)は新型コロナウィルスの猛威と将来に対する不確定要因の多い中、公募価格に対して非常に好調な初値パフォーマンスとなっている(図表「過去1ヶ月のIPO株パフォーマンス」参照)。
万全を期したIPOへの取り組みが魅力を集めた
公募価格で計算した上場前時価総額の11銘柄合計が1,016億円なのに対し、初値での時価総額合計は2,856億円で、実に2.8倍もの評価だ。勿論初値後は下落している銘柄が殆どだが、それでも公募価格を遥かに上回る水準だ。また、どの銘柄も初値から5日間で公開株数(+オーバーアロットメント)の5倍~23倍の売買高が出来ており、売買高がしっかりと伴っている。
公募価格が正しいのか、市場価格が正しいのか
市場での価格がここまで公募価格から上に乖離すると発行体からは「公募価格をもっと高くして、何十億も多く調達できたのに!」と不満が出そうだ。ケース・バイ・ケースだが、確かにフィーチャ[4052]の公募価格520円に対して初値4,710円を見ると約8倍にもなっており、どうかと思う。
リーズナブルなIPOディスカウントは30-40%程度だろうか
証券会社は市場の評価を想定して公募価格を発行体へ推奨するが、価格決定から上場日までの空白期間に対するリスクや、市場環境の急変等を加味して、ある程度の「IPOディスカウント」を考慮する。ここ1ヶ月のIPOはジャスダック(スタンダード)市場が1銘柄・残りが全て東証マザーズであり、東証1部や2部上場銘柄と比較するとディスカウント幅は大きめになる。これに新型コロナの影響や、その他不確定要因を入れると、かなり大きめのディスカウント想定となる。私の経験上11銘柄平均で30-40%程度のディスカウント想定だろうか。ただ、関係者各位の不安が積み重なって、これが拡大していった可能性は否めない。
市場側も投機的?
ただ、証券会社や発行体の検討したIPOディスカウントだけでここ1ヶ月のパフォーマンスは説明できない。
80日もの沈黙(上場延期)時期からの再開なので、確かにどれもテーマ性が今の世の中に合ったものが多い。テレワーク、AI、FinTech、デジタルマーケティング等、現在進行形のイノベーション銘柄だ。
一方、初値以降の価格での11銘柄の株価バリュエーションは、PERやPBRが異様に高かったり(PERは3桁、PBRは2桁も)、PEGも数倍で、中には利益が今期から黒転する予想等も多い。定量的な説明で市場で買い支えている投資家はいるのだろうか。トレンドフォロワーが多いように思える。